政治の世界での出来事が経済界に与える影響

政界で生じる様々な出来事は、日々のニュースでも詳しく報じられます。国民が関心を持つと思われる出来事、また国一人一人の生活に少なからず影響を与えると考えられる出来事はとりわけ大きく報じられます。

政府の経済政策が特定の業界また企業に大きな影響を及ぼすケースも少なくありません。たとえば、政府の方針で「エコカー減税」および「エコカー補助金」が導入されると報じられた時には、自動車を製造する各社、とりわけハイブリッドカーや電気自動車などを手掛ける企業の株価が上昇しました。「家電エコポイント」の導入の際には家電メーカーや家電量販店の企業株が上昇しました。さらに「電力自由化」や「ガス自由化」が政府の経済政策として報じられると、既存の電力会社や大手ガス会社の株価が下落した一方、新規参入の可能性のある企業(たとえば、ガソリンなどの他のエネルギー関連企業)の株価が上昇しました。「脱公共事業」と報じられ、大手ゼネコン株が下落したこともあります。これらはすべて、政治上の決定が日本経済に様々な影響を与えることを示す事例です。

また、政治家個人に何らかの注目が集まると、その人物に関連する業界や特定企業の株価に影響を与える場合もあります。
たとえば、2008年のことですが、麻生太郎氏が自民党の総裁に選ばれる可能性が高いと報じられました。実際、麻生氏は自民党総裁に選ばれ、のちの首班指名選挙にて内閣総理大臣にも選ばれました。このとき株価が急騰した企業の1つが、建設業の「麻生フォームクリート」でした。現在の「株式会社麻生」(旧社名は「麻生セメント」)のグループ内で中核をなす企業です。麻生氏はかつて「麻生セメント」の代表取締役を務めたことがありました。こうした経緯から「麻生銘柄」とみなされた「麻生フォームクリート」の株価が、麻生効果で急騰したというわけです。また、麻生氏が「マンガ好きである」ということから、「創通」、「東映アニメーション」、「まんだらけ」などのアニメ・漫画関連企業株も「麻生銘柄」とみなされ、株価が上昇しました。これは、政治家個人が何らかの形で注目されると、関連業界や関連企業の株価にも影響が及ぶことを示す事例です。

なお、これには後日談もあります。麻生氏はおよそ1年のあいだ総理大臣の座につきましたが、次に政権を取ったのが民主党(現在の民進党)でした。しかし、2012年、自民党が再び政権を奪還します。「コンクリートから人へ」のスローガンと共に「脱公共事業」を推進して政権の座に就いた民主党とは対照的に、当時の自民党は「国土強靭化計画」を掲げ、公共事業に積極的な立場にありました。その自民党が選挙で大勝すると、翌日には建設業の株価は上昇し、また麻生フォームクリート株もストップ高まで上昇するといった影響がありました。