長期的には衰退していく日本経済

現在、日本経済は一時期の苦境を抜け出したようにも思われます。上場企業の利益は史上最高を記録しましたし、世間では人手不足が深刻で、完全雇用に近い状態が発生しています。これだけ見ると、日本の経済状態は、再び登って行くのではないかとも思われますが、長期的には、緩やかにでも衰退していくと考えられます。その一番の原因は、少子高齢化です。いくらAIやロボットの技術が進歩しようとも、経済を支えるのは、人間です。人間の数が少なくなるということは、それだけ労働力が減少するということを意味します。政府は定年を引き上げたり、女性の社会進出を促したりと、労働力確保に躍起ですが、根本的に人間の数が減っていく現象を止めなければ、一時しのぎの措置にならざるを得ません。しかし、人間はそう簡単に増えたりはしません。一度増える方向に進み始めれば、拍車がかかり加速度的に人口は増えますが、これが逆向きの減る方向へと進み始めると、今度は加速度的に人口は減り始めるのです。現在は、日本でも特異に人数が多い団塊の世代と呼ばれる戦後すぐに生まれた世代が大量に引退する時期に当たります。
そのため、退職者と新卒就職者の人口の比率は、団塊世代よりも現在の世代のほうが女性の就職率が高いことを考慮しても、2倍の開きがあるのです。これを職場に当てはめて考えれば、これまで2人でやっていた仕事を1人で回さなければならなくなるのです。あるいは2つあったポストのうち、1つしか埋めることが出来ないという事です。

潜在的に余剰人員がいた企業では、単純に賃金が半分になるのですから、その分が利益として計上されます。また、人員の足りない企業では、争って足りなくなった人手を確保しようとしますから、求人倍率は上がります。これが現在の見かけの好景気のカラクリですが、実査に国民の総所得が増えたかというとそうではありません。さらに高齢者に対しては、年金や医療保険という形で、政府が生活の援助を行いますが、この対象者が加速度的に増えていきます。一人ひとりのサービスの質を落とさないようにするとなると、当然ながら財政の支出は大きくなっていきます。現在のところは、国債を発行しても日銀がほぼ無制限に買い取って、お金を供給してくれているので、財政が破たんしていないように見えますが、どこかの段階で、この歯車も機能しなくなる日が来るはずです。その時、日本経済は緩やかに下降していくのか、突然に崩壊するのか、それはまだ分かりません。